法政大学国際文化学部

情報リテラシーI,II

担当 重定 如彦

2009616

 

17回 表計算ソフト(その1)

1.      表計算ソフトとは?

コンピュータが一般に広まるまでは、計算は主に紙の上で行っていました。例えば、家計簿を付ける場合、家計簿に書かれた収入と支出の計算は人間が手作業で行う必要があります。しかし、人間には計算間違いがつきものですし、多くの計算を行う事はたとえそれが足し算、引き算であっても手間がかかってしまいます。また、紙に書いて計算を行った場合、データの一部を変更しただけですべての計算をやりなおす必要があります。

これらの問題を解決するために生まれたソフトが表計算ソフトです。表計算ソフトを使えば、例えば支出と収入の欄に金額を記入するだけでコンピュータが勝手に収支の計算をしてくれるような家計簿を作ることが可能です。しかもコンピュータが計算を行うので、計算ミスはありませんし、計算量が多くても瞬時に計算を行ってくれます。また、データを訂正した場合でも自動的に全ての計算をやり直してくれます。このように表計算ソフトを用いることで人間が行うと手間のかかる様々な計算を簡単に行うことができます。

表計算ソフトにはセルと呼ばれる升目が並んでいます。この升目には数字や文字や計算式を書くことができます。セルに収支の計算を行うための手順を表す計算式を記述することで、自動的に収支の計算などを行うことができるのです。表計算ソフトは計算能力がある賢い計算用紙と思ってもらってさしつかえありません。表計算ソフトには様々な種類がありますが、授業ではMicrosoft社のExcelという名前の表計算ソフトについて説明します。

2.      アプリケーションウィンドウとドキュメントウィンドウ

Excelを起動するには「スタート」→「すべてのプログラム」→「Microsoft Office」→「Microsoft Office Excel 2007」を選択します。するとExcelのウィンドウが表示され、その中に空白の表が入ったウィンドウが表示されます。Wordでは、一つの文章を一つのウィンドウで表示していましたが、Excelでは、外側のExcel全体を現すウィンドウであるアプリケーションウィンドウと、アプリケーションウィンドウの内部に表示される、Excelが編集する表のデータを表す複数のドキュメントウィンドウから構成されます。アプリケーションウィンドウと、ドキュメントウィンドウの関係は、コンピュータの「デスクトップ」と「ウィンドウ」の関係と同じです。

例えばドキュメントウィンドウの最大化ボタンを押すと、ドキュメントウィンドウが、アプリケーションウィンドウの中で最大化されます。ドキュメントウィンドウが最大化されている場合、そのウィンドウの操作ボタンは、アプリケーションウィンドウのメニューバーの一番右に表示されます(下図の楕円で囲まれた部分)。

Officeボタン

 

名前ボックス

 

数式バー

 

ステータスバー

 

アプリケーションウィンドウにはWordと同様にリボン、タブ、グループなどが表示され、アプリケーションウィンドウの一番下の部分には現在のExcelの処理の状態を表示する「ステータスバー」や表示の縮尺を調整するバーなどが表示されます。

練習問題その1:Officeボタン」→「新規作成」を実行し、右に表示される一覧の中から「新しいブック」を選択すると新しい表計算の用紙(ブックと呼びます)を作成することができます。この操作を行い、タブの右にある操作ボタンをクリックしてドキュメントウィンドウの操作(最大化、最小化、移動、変形など)を行って下さい。

3.      アクティブセルと範囲指定

ドキュメントウィンドウの中は長方形の升目で区切られています。この長方形が並んでいる部分のことをワークシート、一つ一つの長方形のことをセルと呼びます。い

セルには一つ一つ名前がついています。セルの名前はワークシートの一番上の行と一番左の列にそれぞれ記述されているアルファベット(A,B,C…)と数字(1,2,3…)を使って表現します。例えば一番左上のセルはA1、その右のセルはA2です。なお、列はA,B,C…のようにアルファベット順に名前がつけられますが、Z以降はAA,AB,AC…AY,AZ,BA,BB…のように2文字のアルファベットで表されます(2桁を超えた場合は3桁になります)。

ワークシートには必ず太い枠で囲まれたセルが存在し、そのセルをアクティブセルと呼びます。アクティブセルは現在の処理対象になっているセルのことを現します。セルをアクティブにするには以下の方法があります。

·           アクティブにしたいセルの上でマウスをクリックする。

·           キーボードのカーソルキーを使ってアクティブセルを上下左右に移動する。

·           ツールバーの名前ボックスにアクティブにしたいセルの名前を入力する。(ツールバーの名前ボックスには通常は現在のアクティブセルの名前が表示されます)

また、以下の方法で同時に複数のセルを選択状態にすることができます。なお、複数のセルが選択状態になっている場合でも、アクティブセルは一つだけ(選択状態のセルの中で反転表示されていないセル)点に注意して下さい。

·           選択したい範囲のセルをマウスでドラッグする。

·           シフトキーを押しながらセルをマウスでクリックするとアクティブセルとクリックしたセルを対角線とした長方形の範囲のセルが選択状態となる。

·           Ctrlキーを押しながらマウスでドラッグすると、それまでの選択状態を残したまま新しい範囲のセルを選択状態に追加する。

·           ワークシートの一番上又は一番左の列のアルファベット又は数字の部分をクリックするとその行または列をすべてアクティブセルにできる。また、一番左上の長方形をクリックするとワークシートのセルを全てアクティブセルにできる。

セルが範囲指定されている時にカーソルキーを押したり、他のセルをクリックするとアクティブセルが移動しセルの範囲指定が解除されますが、以下のキーを押すことで範囲指定を解除せずにアクティブセルだけを移動できます。

·           Tabキー:右方向へ移動。一番右のセルの場合、下の列の一番左のセルへ移動

·           エンターキー:下方向へ移動。一番下のセルの場合、右の列の一番上のセルへ移動

·           シフトキー+Tabキー:左方向へ移動。Tabキーの逆

·           シフトキー+エンターキー:上方向へ移動。エンターキーの逆

特定の範囲にデータを入力するにはその範囲を選択状態にし、左上から下に向かって順番に「データを入力」→「エンターキーを押して次のセルへ移動」を繰り返すと良いでしょう。例えば以下のような表を作る場合、

 

 

1

4

7

2

5

8

3

6

9

 

次のページの図のようにデータを入力する範囲を選択状態にし、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1」、「エンターキー」、「2」、「エンターキー」、「3」、「エンターキー」のように入力することでカーソルキーを使わずにデータを入力することが可能です。

練習問題その2:TABキーを使って以下のような表を作成して下さい。

 

1

2

3

4

5

6

7

8

9

4.      データの入力

セルにデータを入力するにはそのセルをアクティブにし、キーボードからデータを入力します。この時アクティブセルには「コマンドモード」、「入力モード」、「編集モード」の3種類のモードがあり、それぞれ操作方法が若干異なるので注意して下さい。

·           コマンドモード

アクティブセルをマウスやカーソルキーで選択した直後はコマンドモードになっています(ステータスバーに「コマンド」と表示されます)。コマンドモードでは、セルに式(後述)が記述されていた場合はセルに式の計算結果が表示されます。また、コマンドモード時にDeleteキーを入力することでそのセルの内容を削除することができます。この時複数のセルが選択状態になっていた場合は、選択されているセルの内容がすべて削除されます。

·           入力モード

入力モードはセルにデータを入力するためのモードです。入力モードにするにはコマンドモード時にキーボードから文字を入力します(ステータスバーに「入力」と表示されます)。入力モード時では、キーボードから新しくデータを入力すると、そのセルにそれまで入力されていたデータは消えて新しく入力されたデータで上書きされてしまいます。また、上書きモード時にカーソルキーを押すと、ワープロのように文字カーソルが移動するのではなく、アクティブセルが移動する点に注意が必要です。従って入力モードの場合に入力ミスを訂正するには、その場所までBackSpaceキーを入力して文字を消す必要があります。

·           編集モード

編集モードはそのセルにすでに入力されているデータを編集するためのモードです。編集モードにするには「コマンドモード時にF2キーを押す」、「コマンドモード時にデータが入力されたセルの上でマウスをダブルクリックする」、「入力モード時にセルの上でマウスをクリック」のいずれかの操作を行います(ステータスバーに「編集」と表示されます)。編集モードではワープロと同じようにカーソルキーでセルの中の文字カーソルを左右に移動したり、セルの中の文字列を選択してカットアンドペーストなどの操作を行うことが可能です。なお、ツールバーの「数式バー」にはアクティブセルの内容が表示され、この中身を編集することでセルの内容を編集することも可能です。

·           入力、編集データの確定と取り消し

入力モードや編集モードで入力したデータは入力しただけでは実際にExcelの中にデータとして格納されません。データの入力後に、エンターキーを押したり、他のセルをクリックすることで、アクティブセルを別のセルに移動させることではじめてデータがExcelのセルの中に格納さます。これをデータの確定と呼びます。このことは日本語の入力時の「入力したひらがなを変換中の状態」と、「エンターキーを押して変換した文字を確定させた状態」に似ています。なお、確定する前であれば、ESC(エスケープキー)を押すことで、入力をキャンセルすることができます。

5.      データの種類と計算式

セルに入力できるデータは以下の3種類に分類できます。

·           数値:計算することのできる数字です。数値を入力した場合、特になにも指定しなければセルの中に右揃えで表示されます。

·           文字列:日本語や英語などの文字です。文字列の「1」と数字の「1」は表示は似ていますが、表計算ソフトの中では扱いが違う場合がある点に注意が必要です。具体的にどう違うかは後の授業で述べますが、違うということを頭の隅に入れておいて下さい。123のように数値としても解釈できるデータを文字列としてセルに入力するには先頭に ‘ (シングルクォート。シフトキーを押しながら7を押すと入力できる)を記述します。この場合最初の ‘ 記号はその後に続くデータが文字列であることを示すためのものなので、文字列データのうちには含まれません。文字列は特になにも指定しなければセルの中に左揃えで表示されます。

·           数式:数字や文字を計算するための手順を表した式です。数式は必ず先頭に=記号を記述します。セルに数式を記述し確定させるとそのセルには入力した数式ではなく、その数式の計算結果が表示されます。数式を編集するには、そのセルを編集モードにするか、ツールバーの「数式バー」を使います。=記号で始まるデータを文字列としてセルに入力するには数値の場合と同様に先頭に ‘ 記号を記述します。

 

なお、数字、文字列、数式はセルにデータを入力した際にExcelが自動的に判別します。その判別方法は次の手順で行います。

 

·           先頭が  ではじまるデータは文字列とみなす。

·           そうでなければ、先頭が = ではじまるデータは数式とみなす。

·           そうでなければ、数字として解釈できるデータは数値とみなす。(注:漢字で数字を記述した場合は、それは数値とはみなされません)

·           上記のどれでもなければ文字列とみなす。

数式には+、−、*、/といった四則演算を記述することができ、セルはセルの名前を記述することで指定できます。例えばA1のセルの内容とA2のセルの内容の足し算を計算するには、

A1 + A2

と記述します。このとき、セルの名前は手で入力する以外に、そのセルをクリックすることで記述することも可能です。先ほどのA3のセルに =A1+A2 と入力してみて下さい。A3のセルにA1A2のセルの合計が表示されるはずです。また、A1A2のセルの内容を変化させて確定するとA3のセルの内容が計算しなおされることを確認して下さい。

次に、A3のセルに ’=A1+A2 と入力してみて下さい。この場合は、 ’ を先頭に記述しているので、これは式ではなく文字列とみなされるので、A3のセルには計算結果ではなく、 =A1+A2 がそのまま表示されます。

以下にそれぞれもモードの特徴を表にします。

 

コマンドモード時の表示

文字の揃え

備考

数値

そのまま表示

右揃え

 

文字

先頭が’の場合’は表示しない

左そろえ

先頭が’の場合は文字とみなす

式の計算結果を表示する

右揃え

必ず先頭に=を記述する

練習問題その3: 次のデータをExcelのセルに入力した場合、それぞれ「数値」、「文字列」、「数式」のうちどれと解釈されるかを答えよ。

·           ’1+2*3

·           =1+2*3

·           1+2*3

·           十二

·           12abc

 

 

6.      データの保存と新規作成

Excelで作ったデータをファイルに保存する方法は、Wordの場合と全く同じで、「Officeボタン」→「上書き保存」又は「名前を付けて保存」を実行します。保存したファイルの拡張子は .xlsx となり、保存したファイルのアイコンをダブルクリックすることで、そのファイルをExcelで再び編集することができるようになります。なお、拡張子が.xlsxで保存されたExcelのファイルは古いバージョンのExcelでは扱えません。古いバージョンのExeclでも扱えるファイルを保存したい場合は、保存パネルの「ファイルの種類」のメニューから「Excel97-2003ブック」を選択してください。この場合作成されたファイルの拡張子は.xls になります。新しい表(ブック)を作成するには、「ファイル」→「新規作成」を実行し、右の一覧から「空白のブック」を選択します。なお、Wordと同様にExcelにもいくつかテンプレートが用意されています。テンプレートを使用したい場合は、パネルから使用したいテンプレートのアイコンをクリックして下さい。

7.      練習問題その4

それでは実習もかねて以下のようなある月の支出の合計額とエンゲル係数(支出の中で食費の占める割合)を計算する表を作ってみましょう。

 

 

食費

35000

交通費

5000

住居費

50000

書籍費

10000

娯楽費

20000

合計

120000

エンゲル係数

29.16667

 

·           データの入力
まず、B6B7の部分以外のデータを上記の通りに入力して下さい。

·           合計を求める計算式の入力
B6
には食費から娯楽費までの支出の合計を求める式を書きます。それぞれの項目のデータはB1,B2,B3,B4,B5のセルに記述されているので、
  B1+B2+B3+B4+B5
を計算すれば合計を計算することができます。式は必ず最初に = を書く決まりになっているので、B6のセルに
  B1+B2+B3+B4+B5
と入力して下さい。
この時、すべて手で入力してもかまわないのですが、セルの番号はセルをクリックすることで入力することができます。具体的には以下の手順で入力します。

Ø  「=」を入力する

Ø  B1のセルをクリックする。

Ø  「+」を入力する

Ø  B2のセルをクリックする

Ø  以下同様に繰り返し、最後にエンターキーを入力する。

エンターキーを押すと、セルの内容が式の計算結果である「120000」に変化します。

·           エンゲル係数を求める式の入力
エンゲル係数は、支出の中で食費の占める割合ですから、「食費」/「合計」で求めることができます。答えを%で表示する場合、その答えに100を掛ければ良いのでB7のセルには
   B1B6100
と記述します。この例でもわかるように、表計算ソフトでは、B6のセルのように式が書いてあるセルの計算結果を別のセルの計算式の中で使うことも可能です。この場合ExcelはまずB6のセルの式を計算(B1+B2+B3+B4+B5)し、その結果を使ってB7のセルの式(B1/B6)を計算します。

以上で表が完成しました。このB6B7の式は表の中のデータが変化すると即座に実行されます。例えば、B1からB5のセルの数字を適当な値に入力しなおしてみて下さい。入力が確定し次第、B6B7のセルの内容が新しい値を元に計算しなおされます。

練習問題その5:上記の表のA6に貯金、B610000A7を合計、A8をエンゲル係数を入力し、B7B8に式を入力してそれぞれ合計とエンゲル係数を計算する表を作って下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

課題のメールは masaki.yamashita.67@gs-art.hosei.ac.jp までお願いします。

質問のメールなどは、 sigesada@hosei.ac.jp までお願いします。

授業の資料の最新版は http://www.edu.i.hosei.ac.jp/~sigesada/ にあります。